Sonnet 5.5の性能と費用を比較する。NVIDIAの制御基盤とZendeskの国内提供も発表

1. Claude Sonnet 5.5が登場。性能は伸びたが、費用は推論設定で変わる
Anthropicは9月28日、Claude Sonnet 5.5を公開しました。APIの通常単価は100万トークンあたり入力2ドル、出力10ドルで、Sonnet 5と同額です。Claude Platformに加え、AWS、Google Cloud、Microsoft Azureでも提供されます。Anthropicの発表
今回の注目点は、以前からできたコーディングや文書作成を、どの程度の品質と費用で終えられるようになったかです。外部評価を読むと性能の伸びは確認できますが、「SonnetならOpusより安く済む」とは一括りにできません。
独立評価では前モデルを上回る一方、Max設定の費用は高い
評価機関Artificial AnalysisのIntelligence Indexは、コード実行、業務課題、文書の読解など10種類の評価をまとめた指標です。MediumやMaxは、AIが推論に使う計算量を調整する設定です。現在のv4.3.2では、次の結果が掲載されています。
| モデル | 推論設定 | 指標スコア | 評価1課題あたりの費用 |
|---|---|---|---|
| Claude Sonnet 5 | Max | 38 | 5.09ドル |
| Claude Sonnet 5.5 | Medium | 41 | 0.59ドル |
| Claude Sonnet 5.5 | Max | 56 | 7.60ドル |
| Claude Opus 5.5 | Max | 58 | 5.98ドル |
| GPT-6 Sol | Max | 48 | 1.06ドル |
出典:Sonnet 5、Sonnet 5.5 Medium、Sonnet 5.5 Max、Opus 5.5、GPT-6 Sol。
スコアは正答率や生産性の倍率ではありません。費用は、この評価群で使った入力・出力・推論・キャッシュの料金を課題数と評価の重みに応じて集計した値です。実際の社内業務一件にかかる金額とは異なります。また、同じMaxという名称でも、モデル間で使える計算量が同一という意味ではありません。Sonnet 5.5とOpus 5.5は、既定の安全措置による別モデルへの切り替えを含む設定で評価されています。
ここから読み取れる変化は二つあります。
- •低めの推論設定でも、前モデルを上回る選択肢ができた。 Sonnet 5.5のMediumは、この総合指標でSonnet 5のMaxより高く、評価費用は低くなっています。
- •性能を引き出す設定では、安い単価が安い総費用につながるとは限らない。 Sonnet 5.5のMaxはOpus 5.5に近いスコアですが、評価費用は上回っています。GPT-6 Solはスコアでは下回る一方、同じ評価群の費用は低くなっています。

この表には、更新直後の評価として留保もあります。Anthropicは、Sonnet 5.5の公開前環境に構造化出力の不具合があり、GDPval-AAとAA-Briefcaseの評価に影響した可能性を公表しています。GPT-6 Solにも画像理解の修正があり、一部の外部スコアには修正が未反映の可能性があると説明しています。したがって、わずかな点差を確定した順位として扱うのは早計です。評価に関する脚注
コメント:「最大まで考えさせる」が最善とは限らない
推論設定は、費用だけでなく仕事の進め方にも影響します。Anthropicが掲載したFrontierCode 1.1の結果では、Sonnet 5.5はXhighで52.1%、さらに高いMaxで46.2%でした。この評価は、コードの変更を人が手直しせずに採用できるかを測り、依頼範囲を越えた変更も減点します。調べられた2例では、Maxで追加のレビューを走らせたことが、時間切れや余計な変更につながっていました。差のすべてを説明するものではありませんが、確認作業を増やせば必ず成功率が上がるわけではないことが分かります。公式の評価条件
一方、利用者による小規模な比較では、Sonnetの費用面の利点も報告されています。Redditの投稿者Fabulous_Pollution10氏は、自分の仕事から選んだ10課題を各3回、High設定で実行しました。Claude CodeではSonnet 5.5とOpus 5.5がともに30回すべて成功し、一回の平均API費用は約0.15ドルと約0.36ドルだったとしています。ただし、本人も新モデルには課題が簡単すぎると認めています。これは個人の試験結果であり、あらゆる開発案件で同じ差が出る証拠ではありません。本人の試験報告
Artificial AnalysisのMax評価と、このHigh設定の試験は矛盾しません。課題の難しさも、推論設定も、実行する仕組みも違うためです。モデルを選ぶ際は、まず普段の仕事で必要な品質を決め、その品質に届く設定同士で費用を比較する必要があります。Sonnet 5.5の価値は、すべてを最高設定で動かすことよりも、必要な品質に低い設定で届く仕事が増えるかどうかにあります。
2. NVIDIAがエージェントの制御基盤を発表。モデルの外側で権限を守る
NVIDIAは9月28日、Open Agent Safety Platformを発表しました。エージェントが使えるシステムやデータを制限するOpenShellと、独立したハードウェア側で監視するSentryの参照設計を組み合わせたものです。エージェントへの指示だけに頼らず、その実行環境で操作を制御する構成を打ち出しています。NVIDIAの発表
ソフトウェアの制御と、独立した監視装置を組み合わせる
それぞれの役割と提供形態は異なります。
- •OpenShell:公開済みのオープンソース実行基盤。 エージェントの外側でアクセス権限を強制し、操作を記録します。認証情報をエージェントの作業環境から分離し、許可された接続にだけ使う仕組みも備えます。
- •Sentry:BlueField-4 DPUを使う参照設計。 エージェントが動く環境とは独立した処理装置で監視と制御を行います。NVIDIAは、境界を越えようとするエージェントをミリ秒単位で隔離・停止すると説明しています。ただし、全利用者がすぐ使える完成済みサービスという発表ではありません。
OpenShellの技術解説には、GitHubのAPIに対して読み取りを許可し、書き込みを遮断する設定例があります。AIが「書き込みません」と約束するだけでなく、実際の通信を外側から調べて止めるという違いです。OpenShellの技術解説

コメント:守るべき境界を、具体的な操作まで落とし込めるか
企業にとっての論点は、制御を置く場所に加え、何を許可するかです。たとえば顧客情報の検索を許可する場合でも、対象顧客を一件確認する操作と、全顧客の情報を外へ送る操作を同じ権限で扱ってよいとは限りません。接続先や操作の範囲が広すぎれば、その範囲内で起きた望ましくない行動を止められない場合があります。
今回の発表は、こうした権限をモデルから独立した仕組みで守ろうとするものです。ただし、それだけで業務上の判断の正しさまで保証されるわけではありません。導入を検討する際は、「何を止められるか」を、自社で許可したくない操作の例に置き換えて確かめることが必要です。停止速度についても現時点では開発元の説明であり、個々の環境での検証結果とは分けて捉えるべきでしょう。
3. Zendeskが特化型エージェントの国内提供方針を公表。MCPと本体では提供段階が異なる
Zendeskは9月28日、日本向けにSpecialized Agentsの提供方針とMCPクライアントの一般提供開始を発表しました。特化型エージェントは、小売業などの共通業務を扱う「業界特化型」と、各社のルールや承認手順に合わせる「カスタム」の二つからなります。日本向けの発表
小売向けでは、ShopifyやStripe、Riskifiedなどと連携し、注文の確認、返金、リスク情報の確認といった処理を進めます。MCPは、AIが外部のデータや機能に接続するための共通方式です。接続機能が一般提供されることと、業務を担うエージェント全体が正式提供されることは、分けて読む必要があります。製品の説明
今使えるものと、今後の正式提供を区別する
| 対象 | 発表時点の提供状況 | 日本語対応 |
|---|---|---|
| MCPクライアント | 一般提供開始 | 今回の日本向け発表で案内 |
| カスタムエージェント | 早期アクセス開始済み | 日本語でも動作。正式サポートは2026年内予定の一般提供時 |
| 小売向け業界特化型エージェント | 早期アクセスを近日開始予定 | 日本語対応は2026年内予定の一般提供時 |

コメント:注目したいのは、共通業務と自社ルールを分けて組み立てる設計
注文情報を調べて返金すること自体が、今回初めてAIに可能になったわけではありません。Zendeskの提案で注目したいのは、小売で共通する処理を用意したうえで、各社独自の条件を追加する構成です。返金ひとつでも、注文を取得する部分は共通化しやすく、返金できる期限や金額、人の承認が必要な条件は会社ごとに異なります。
共通部分を製品に任せ、自社側は例外や承認条件に集中できれば、個別開発の範囲を絞れる可能性があります。その効果を判断するには、連携サービスの名前を確認するだけでなく、自社が必要とする操作まで対応しているかを見る必要があります。注文情報を取得できても、利用中の決済手段で返金を実行できるとは限らないからです。
既存システムとの接続範囲、例外処理、料金、日本語での正式サポートを合わせて確認して初めて、現行の運用をどこまで任せられるかが見えてきます。今回の国内発表は、すぐに全面移行する判断よりも、正式提供に向けて自社の条件と照合する材料として役立ちます。
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